歯周病と全身の病気
歯周病が、全身のさまざまな病気と深く関係していることをご存知ですか?
例えば、歯周病の患者さまは脳梗塞や心筋梗塞などの循環系の障害になる確率が3〜4倍、早産・低体重児出産は約3〜7倍と危険性が高まり、その他には糖尿病や誤嚥(ごえん)性肺炎など多数の病気と関連しています。
口の中の歯周病程度と軽く考えがちですが、糖尿病や心筋梗塞などは自覚症状が無いため、歯周病であると診断された人の中には、もうすでに様々な全身の病気の危険にさらされているかもしれません。
歯周病は感染症
歯周病は歯周病原菌の感染により、発症・進行していきます。歯みがき(ブラッシング)が疎かになったり、歯みがきをしていてもみがき残しがあったりすると、歯垢(プラーク)が蓄積していきます。
歯垢とは、様々な種類の細菌の塊で、歯石とはこの歯垢の死骸の塊です。
これらは歯みがきを怠ったり、みがき残しがあると、異常に繁殖し、それらが産出する毒素や酵素によって、歯周組織の炎症や歯槽骨の吸収を引き起こします。これが歯周病です。
歯周病になりやすいその他の原因
歯周病の一番の原因は、プラークとされています。プラークの中に棲息する細菌が毒素を出し、それによって歯ぐきが炎症を起こします。
歯周病を防ぐために「プラークコントロール」がとても大切なのは、そのためです。
また、歯周病になるその他の原因として、主に次が挙げられます。
その他の原因
- 歯並びが悪い
- ストレス
- 不適切なブラッシング
- 遺伝や体質
- フィットしていない詰め物や被せ物
- 全身疾患(糖尿病など)
歯周病原菌が全身へと影響を
およぼすメカニズム
歯周病が進行すると歯周ポケットは深くなっていきます。
これに伴い、歯周病原菌の数も増えていき、さらには生体内に侵入した細菌を排除するために白血球が歯周ポケット内へ大量に集積し、免疫・炎症反応が引き起こされます。
その際に作り出されるされるサイトカインなどの物質や歯周病原菌が血液中に入り込み、血行に乗って全身へ移行し、さまざまな疾患と関連していくのです。
※サイトカインとは、抗原が感作リンパ球に結合した時に、このリンパ球から分泌される特殊なたんぱく質
歯周病原菌が原因になる全身疾患の種類
メタボリック シンドローム |
歯周ポケット内の細菌が作る内毒素、肝臓でのエネルギー消費を邪魔して肥満の原因になります。また、歯周病が糖尿病を悪化させる原因にもなります。 |
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脳血管疾患 ・心臓疾患 |
歯周ポケット内の細菌が血管内に入り動脈硬化が起き、脳梗塞や心筋梗塞の原因となります。 |
妊娠トラブル | 歯周病菌によって早産や未熟児出産などの原因となる可能性があります。 |
誤嚥性肺炎 | 口の中の細菌が唾液や胃液と共に気管支や肺に入り込み、肺炎を引き起こします。 |
ピロリ菌感染 胃疾患 |
歯周病はピロリ菌感染による胃潰瘍の引き金になり、増悪させる原因になると考えられます。 |
骨粗しょう症 | 歯周ポケット内の細菌は、歯を支える骨を溶かすだけでなく、血液に入り込んで全身の骨をボロボロにしてしまいます。 |
関節炎・腎炎 | 歯の周りから入り込んだ毒性物質が腎炎や関節炎になってしまうこともあります。 |
皮膚疾患 | 口の中の細菌が作るたんぱく質が皮膚炎を引き起こすことが分かってきました。 |
歯周病の進行段階
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STAGE 0
健常
歯ぐきが健康な状態です。歯周ポケットは2~3mm程度と言われています。しっかりした歯みがきと定期健診を受けてこのままの状態を維持しましょう。歯ぐきの状態(歯ぐきが薄いピンク色で引き締まっている)
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STAGE 1
歯肉炎
軽度の歯周炎は歯茎が少し赤みを帯び腫れた状態になります。軽度歯周炎の場合の目安は歯周ポケットが3~4mm程度と言われています。この段階ではプラークや歯垢をスケーリングなどで取り除き、正しい歯みがきを毎日することです。自覚症状(歯ぐきが腫れ、押すと血が出る)
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STAGE 2
歯周炎
歯周炎になると、口臭がおこり、歯茎が化膿します。歯みがきをした際に膿がでることもあります。歯周ポケットは4~5mm程度です。この段階になるとブラッシングやスケーリングだけでは改善が見込めないことが多いです。適切な処置を受ける必要があります。自覚症状(歯ぐきが下がる・歯がしみる・口臭が気になる・歯が動く・噛むと痛い・膿が出る)
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STAGE 3
歯を支える骨が溶け歯が抜ける
歯がグラグラして、歯と接している歯茎がさらに腫れ、化膿が進みます。歯と歯の間が広がり、歯茎が下がって、歯が長く見えます。この状態になると抜歯もせざる負えない状態です。歯を失うと(食べ物を噛む力が弱くなる・顔貌が変わる)
一般的な歯周病治療の流れ
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- Step 1
- 検査・診断
口腔内写真、歯科用レントゲンなどの資料取り、歯周組織検査など口腔内全体の細かい診査をします。
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- Step 2
- 歯周病基本治療
歯周病は基本治療が最も重要です。基本治療は以下になります。
- スケーリング
- 不適切な被せ物のとりかえ
- ルートプレーニング
- プラークコントロール指導
- 正しいブラッシング指導(治療前後の写真)
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- Step 3
- 外科治療(基本治療で治らない場合)
重度の歯周病になってしまった場合は基本治療だけでは歯周病の治癒は望めません。そうなった場合、歯周外科再生療法という外科処置による再生療法を施すことにより歯周病からの改善を図ります。
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- Step 4
- メインテナンス
定期的にメインテナンスをすることが歯周病の再発を予防するポイントになります。歯周病で歯を失わないためにもしっかり定期検診を受診しましょう。
歯周病セルフチェック
ひとつでも当てはまる場合は、お早めに歯科医院で受診することをおすすめ致します。
歯科疾患実態調査によると、35歳以上の国民の80%が感染している病気であると報告されています。蛇足になりますが、ギネスブックで世界一多くの人が罹っている病気であると認定されています。
- 歯みがきのとき歯肉から出血はありませんか?
- 歯肉の色が変わったり、腫れたり膿がでたりしていませんか?
- 1本でもグラグラする歯はありませんか?
- 口臭は気になりませんか?
- 歯肉が下がって歯が長くなってきているような感じはありませんか?
- 歯並びやかみ合わせに変化はありませんか?